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昔、野田の持吉という人が、川で馬を洗い、手綱を木にくくりつけて家に帰っていた。その時、カワントンが手綱をほどき馬を川に引っぱりこもうとした。馬はびっくりして、持吉の家に走って帰り着いたところ、カワントンが手綱にからまっており、そのまま連れて帰ってしまった。
村の人たちは持吉の家に集って来て、しばしばこのようないたずらをするカワントンを、どうこらしめようかと相談を始めた。
カワントンは、「こりゃ大変、あやまるにかぎる」と、平身低頭「野田の人たちには危害は加えません」と詫び証文を書いて許してもらった。
それ以後、野田の人たちは水難にあわなくなった、しかし、残念なことにその詫び証文は火事でなくなってしまった。