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添田町の民話 ゴンザ虫

ページID:0001577 更新日:2025年1月14日更新 印刷ページ表示

ゴンザ虫

 英彦山のふもとの村に「ゴンザ虫」と呼ばれる奇妙な虫がいるという。昼間は姿を見せず、夜になると、どこからともなく鳴声をきかせ、その声は金をきしる音のようだ。何でも、金のしずくをなめて生きており、姿は人間そっくりだという。

 昔、この村に貧しい一家が住んでいた。どうしたわけか、一家に不幸ばかり続いた。夫婦には3人の子どもがいたが、母は末っ子を生んだあと産後の肥立ちが悪く死んでしまった。父も心労から床に伏す身となった。長兄の源吉は、親孝行で心やさしい子であった。けれども、貯えの全くない一家を支えるには、わずか8・9歳では親戚を頼るしかなかった。
 そこで、隣村の権三おじをたずねて苦境をうったえた。権三は金持ちであったが強欲で、わずか十文の銭を恩きせがましく貸しただけであった。それだけでは、一家は2~3日しかしのげない。源吉はふたたび権三に助けを求めに行ったが「人に貸すような金はない」と、権三の返事は冷たくそっけなかった。
 しかたなく、源吉は泣く泣く帰ってくるときに、ふいと一人の老人が姿をあらわした。その手に粗末な下駄を一足持ち、源吉に「この下駄をお前に授けよう、望みごとがあれば、これをはいて転ぶがよい、転ぶたびに小判が一枚ずつ出る。しかし、望みが人のためならよいが、自分のためならば、転ぶたびに体が小さくなることを忘れるでないぞ」と言った。
 源吉は、下駄の力をかりて、父のために骨身をおしまず看病したので、父の病は日一日と快方に向かった。
 この話を聞いた権三は、その下駄が欲しくてたまらず、源吉の家にやって来て「この前貸した十文をそっくりそのまま返してくれ、それがだめならこの下駄をもらって行く」というと、むりやり下駄をつかんで帰ってしまった。
 翌日、源吉は下駄を返してもらおうと、権三の家に出かけた。おじの姿を探すがどこにも見当たらない。しかし、土間にはまばゆいばかりの小判の山があり、そこに小形の見なれない虫が一匹しがみついていた。だれいうとなく、それを「ゴンザ虫」と呼ぶようになった。