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肥前国鍋島村に平右衛門(平太郎ともいう)という人が、願うことがあって彦山権現に参拝した。
その日は冬の寒い日であり、雪が積もっていて帰る途中、足をすべらせて谷間に落ち、気を失ってしまった。
何時間たったろうか、ふと息を吹き返してみると、手に金の仏像を持っているではないか。しかも、自分の体には傷一つもない。これは彦山権現の御加護だと改めて感涙にむせんだ。
平右衛門は、後に佐賀に彦山権現よりさずかった金の仏を納めるために、彦山権現社を建てた。子孫は繁栄して、肥前国の大名になった。