英彦山の近くに杖立峠という所があり、松尾芭蕉の句碑があります。上落合長谷からが行きやすいです。碑に刻まれた句は、上記のとおりです。 「えっ、こんな山道でなんで蛤が出てくるの」「どうして芭蕉がこんな草深い所までやって来たんでしょう」 そんな疑問がでるでしょう。こんな山奥で蛤が取れるわけはないし、芭蕉は九州まで来なかったのですから。この句は芭蕉が奥の細道の旅を終わって、いまの大垣市で送って来てくれた門人たちと別れるときの句です。芭蕉を慕う門人のなかの、第4世の門人で地元の柏村蛙庵五調という俳人が、明和9(1772)年3月、師を慕って建てたものです。 ここはいま旧道になって久しく、山道ですが、むかしは日田方面と添田・小倉方面を結ぶ重要な道だったのです。日田の方からやって来た旅人たちは、ここで英彦山に参る人たちと添田・小倉方面に下る人たちとに別れます。互いに「お気をつけて」などと言って別れて行った峠です。 添田町中央公民館の前庭にも同じような句碑があります。句は「枯枝に鳥のとまりけり秋の暮」。 建立は天保3(1832)年、建立者は5世高瀬飄々庵砂水、蛙庵五調の弟子で近くの住人、大庄屋(10数人の庄屋を束ねる役職)を勤めた人です。
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