笑いばなし(その2)


 吉吾さんの天のぼり。苗代作りの前に、木の若芽や草を踏みこんで肥料にするとともに、田をやわらかくすることをノシロフミあるいはノンシロフミという。
 ノシロフミをするころ、吉吾さんが「天のぼりをするけん、見に来ちょくれ」と、あたり近所にふれて回った。村の人たちは、吉吾さんのいうことやけん、どうせホラ吹きに違いないと思ったけど、どんなことをするんやろうという興味もあって、ぞろぞろと吉吾のいう苗代に集まってきた。きてみると、田の中に一本の高い柱が立っている。やがて、吉吾さんが柱をのぼりはじめると、人びとは田に入ってきて「吉吾さんはあぶないことをするもんだ」と語りあいはじめた。吉吾さんは、みんなが田をよくふんだと思ったころ、「そげんあぶないもんなら」といっておりてきたげな。