カッパのはなし(その2)


 昔、中元寺は虫生の庄といって、芦がしげる湿地が多くあった。ある日の夕方のこと、一人の子供のような者が、民家を訪ね「今夜大雨が降って山が抜けるから逃げておくれ」といって回った。人びとは、おかしなことだなあと思いながらも、避難をした。やがて夜になると、予告どおり大雨で川ははんらんし、猿渡あたりは山崩れが起こった。これをみた村人は「あの子供は、瀬成の神に仕えているカッパに違いない、よくぞ知らせてくれた」と、カッパをかわいがってやることになった。
 そうするとカッパはつけあがり、田畑を荒したり、子供を川に引き込んだりして村人を困らせるようになった。それで瀬成の神様は大変立腹されて、カッパに対し「悪さをするなら出て行け、心を入れかえるなら中元寺におらせるが」としかりつけた。これにはカッパもこたえて反省し、石に詫び証文を書いて神様に差し出した。それ以後、中元寺の人びとは水難にあうことはなくなった。カッパの詫び証文石は、瀬成神社参道入口右側のハゼの木の根元に抱きこまれたようになって残っている。