広報そえだ町長室(広報そえだ 令和2年3月号掲載)
3月。卒業の季節である。
添田中学校の校歌に「健児競うや千五百」とある。
1学年500人。
当時の学生の多さに驚嘆する。
私の時代(昭和40年卒)では、中学校12クラスあり1クラス50人は優にいたと思う。
1学年600人。
まさしく「健児競うや千五百」である。
現在の少子化社会、数字的には寂しい限りである。
多くの友達は東京や名古屋、大阪などへ進学・就職していった。
日本の産業を支えた石炭産業も閉山を余儀なくされた時代であった。
企業の卒業(撤退)と重なり合っての進路選択であった。
添田町も林業・農業の町へと戻った。半世紀経過し人口も今では一万人を割っている。
この状況で生活しなければならないし「まち」を作っていかなければならない。
町は、国の補助金で人を呼び込もうと施設を造った。
それら施設も卒業を迎える時期に来た。
卒業という寂しいニュアンスの中にある希望・新しい旅立ちにスポットを当てる必要がある。
英彦山温泉しゃくなげ荘。
これまでかなり「まち」に貢献してきたが、ここ数年息切れがしてきた。
温泉に浸かるのを楽しみにしていたファンの皆さんには申し訳なく思うが、新しい「しゃくなげ荘」に変わらなければならない。
そのままでのリニューアルでは、利用するお客さんも減少し、継続して運営していくことができない。
このような、利用客減少の中、住民ニーズをしっかり把握して対応しなければならないと思っている。
宿泊施設の形態として通常のホテル等や「グランピング」というのがある。ひとつの方向として検討している。
言葉としては英語の「グラマラス」と「キャンピング」を合わせたもの。
自然に囲まれたロケーションの中に、贅沢で快適な宿泊施設を用意して野営することである。
一般にキャンプといえば、アウトドアで宿営するための最小限の用意のみで行う。
食事も寝床も簡素なものであるが、この「グランピング」と呼ばれるタイプのキャンプでは、風呂・トイレ・空調設備・ゆったり座れるソファ・ベッドなどを揃え、ものによってはテレビや冷蔵庫なども備えられた、豪華な設備がしつらえられる。
自然の中で過ごすキャンプの醍醐味と、ホテル並みの快適な過ごし方を両立させるスタイルである。
ブームであり他の地域では冬場でも盛況であるとのこと。
ブームという事だけでなく、慎重かつ大胆に対応していきたい。
JR日田彦山線も卒業の議論になっている。
留年してそのままにして利用客が減少し続けるか。
住民の皆さんの利用しやすいように駅を近くに増やすなど高齢者・障がい者でも安心して乗れる車両を導入するとか、費用はかかるが行うのか。
ハードルが高い。
鉄道が無くなると地域が衰退すると言うが、自らで鉄道を維持できないような地域では、鉄道があっても無くても関係なく、元気な地域は元気であると言う評論家もいる。
卒業は新たな旅立ちスタートである。新たな旅立ちがあるから卒業するのだと思う。